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点が線になって、線が面になる日

11月の終わり頃—ふと「勉強したい」と思いになった。きっかけはとあるYouTubeの大学受験に関する動画である。受験生が東大を目指して本気でやっていくドキュメンタリーを追いながら、20年前の自分の受験期を思い出していた。高校は地方の公立進学校であったもののトップ校ではないその中でも成績は落ちこぼれであった、ただ1年の受験期間でぐんと成績を伸ばして旧帝大に合格ができたのだ—長らく忘れていたけれど、「ひょっとして、あれって結構な偉業だったんじゃないか?」そんな自分のポテンシャルを見つけ直して、勉強の火がついた。

その火が向かった先は三つの道。ひとつは自動車整備士の学校に通って海外で腕を試す未来。もうひとつは大学受験をやり直す未来。そして三つ目—社会人として資格に挑む未来。結局社会人の身であるどれも本気で目指すわけではなく、まずはどんなものか見てみたいというものあり、メルカリで安く売られていた会計士の予備校テキストを購入した。「身長くらいの高さのテキスト」という言い回しがあるけれど、文字どおり目の前に積まれた重さで現実味が増した。テキストは、2年ほど前の合格を目指していたものでほぼ新品だった。前の持ち主がどのような思いで予備校に入学し、このテキストを学習していたのか分かるはずもないが、実にテキストが開かれて書き込みがあったのは初めの2ページに過ぎなかった。AIにも相談して、まずは財務会計から、管理会計は3割くらい並走—そんな作戦で開始。財務会計は書きながら馴染んでいく学習方法が心地よかった。

ただ、勉強を進めていくうちに財務会計は難しい(そもそも簿記3級すら持ってやしないわけで)、それよりも分厚い「企業法」のテキストがずっと気になっていた。眺めるうちに「これは暗記科目だ」と理解し、今の勉強法では噛み合わない。暗記が苦手なのである。そこで一時財務会計の勉強を止め、暗記そのものと向き合うことにした。YouTubeで繰り返しや語呂合わせ、場所法を漁ってみるも、社会人の時間制約の中で、覚えるための“覚える仕掛け”を作る手間が重すぎるとわかった。テキストを紙やパソコンへ書き写し、そこから穴埋め問題を作る。これがものすごく手間で途方もない作業なのであった。

会計士試験は科目が多く、範囲が広い。テキストごとに縦割りで覚えるのは避けられないけれど、王道と知りつつも暗記で進めていくには限界があった。何か裏技はないか。そこで思いついたのが“シナリオ学習”だ。暗記の軸ではなく地頭という軸で見直すと、学習の糸口が見えてくる。自分が会社を設立すると仮定しシミュレーションを行ってみることだ。商品を仕入れて売り、仕訳が積み重なり、事業が大きくなって取締役会を設け、監査が入り、税金を納める—この一本の物語の中で、財務会計・管理会計・監査論・企業法・租税法を横断して学習していく。例えば金融業を営めば手形や貸倒れの概念が現れ、規模が増せば会社法上の枠組みが必要になる。監査では不正リスクや分析的手続の視点が“物語の中の現実”に接続される。地頭で理解することで点が線になって、線が面になる感覚。これは自分にとって小さな発明で、理解が2倍3倍の速度で結び直される見通しが立った。

まとめると、暗記から理解へ繋ぐ方法と、地頭から理解へ繋ぐ方法—二つのアプローチがある。暗記を軸とした学習法は理解せずともまずはテキストの文章を暗記してしまい理解は後からついてくる考え方だ。ただ、これだと単調になってしまいとても辛い作業になってしまう。一方で、地頭からのアプローチは論文式試験と同じシミュレーション形式で、事実を読み、ルールを適用し、当てはめて結論を出すゲームだ。ならば、勉強そのものをシミュレーションにしてしまえばいい。予備校の学習科目は学問の区分けとして分けられているだけで、現実では密接につながっている。だから、勉強も一本の物語にしたほうが学習速度は速い。